carsensor EDGE.net

大人のためのプレミアカーライフ実現サイト  輸入車・外車のカーセンサーエッジ

EDGE.net > Road to Rally Mongolia

ahead femme 編集長・若林葉子のラリーへの道

01.ラリーへの夢

2005年盛夏。中国との国境近く、モンゴルのザミンウッドに立っていた。コンテナヤード以外には何もなく、このザミンウッドという場所を町と呼ぶべきか、村と呼ぶべきかも分からない。『ahead』の前編集長でもあり、当時はカメラマンとしてお付き合いのあった桐島ローランドさんが、パリダカへの前哨戦として出場するクロスカントリーラリー、『BEIJING ULANBAATAR 2005』の同行取材のためである。
スタート時間が数時間後に迫り、参加者も主催者も準備に余念がない。着替え、荷物の整理、ルートのチェック、クルマやバイクなど自分のマシンの調整…などなど。私はと言えば、自分のすべきことが分からず、茫漠と広がる平原の前でただ立ち尽くしていた。これほど右も左も分からない取材は後にも先にもなかったほどだ。同行取材が決まった時には飛び上がるほど嬉しかったのが嘘のように、不安だけが胸にうずまく。
しかしそれでも約一週間の砂漠の旅は始まったのだった。

砂漠の洗礼

記憶を正確に辿れば、辛いことの方が多かったと思う。
日中はとにかく暑い。打って変わって朝夕は寒さに震える。口にするミネラルウォーターは温まっている。水道がない。トイレがない。木陰がない。椅子がない。「雨は降らないよ」と聞いていたのに、なぜか暴風雨に遭って、テントも荷物もどろどろ。遠くに竜巻を発見して恐ろしくなる。どこから入り込むのかバッグのすみずみまで細かい砂だらけ。あれはすべて砂漠の洗礼だったのだろうか。慣れないことばかりで、何度も泣きそうになり、3日目の雨の夜には本気で日本に帰りたいと思った。
なのに、帰国後、再びモンゴルへ行くことが私の夢になった。─それも一人の参加者として。

人が美しくなれる場所

なぜ、と人からも問われ、自分でも不思議に思うが、よく分からない。
振り返って考えると、「辛い」と思った砂漠の自然が、私の中に強い記憶を残したことは確かだ。温かいとか涼しいとかはほんの一瞬で、暑いか寒いか、それだけ。雨と言えば暴風雨でゴーグルがなければ前も見えない。晴れると湿気などみじんもなく、汗さえ干上がって塩が吹く。
クリアで曖昧さがない。「なるほどここでは侘び寂びなんてものは無縁なんだ」、と新鮮だった。
そしてそのこと以上に、あの砂漠で、私は初めて人間を美しいと思ったのだ。感動と言って良いほど鮮烈に。ヘリから見下ろした、だだっ広い大地を、たった一人、バイクにまたがって駆け抜けるエントラントの姿。神聖とさえ感じられた。
馬に乗って疾走するモンゴル人を上空から目にした時にも似たような思いを抱いた。ヘリに気付くと、どちらもさっと手を上げて挨拶を交わす。そしてまた駆けていく。雑念のない、あり得べき人の姿だと思った。
人をそんな風に美しくしてくれる場所に、だからもう一度、自分の身を置いてみたいのかも知れない。
あれから4年が過ぎた。いつかは冷めるかと思われた「モンゴル熱」は、しかし今も、静かに私の心に燃え続けている。

文・若林葉子

02.始動>>

若林葉子

若林葉子

ahead femme 編集長
1971年大阪生まれ。立教大学文学部卒。OLを経てフリーランスに。2005年よりフリーマガジンaheadに携わり、2009年より現職。2005年7月~2006年9月まで、日経ビジネスOn Lineにて「もてるクルマ、もてないクルマ」を連載。2005年、桐島ローランド氏の2輪クロスカントリーラリー初挑戦“Beijing Ulanbaatar 2005”に同行取材し、以来、ラリーの魅力に憑かれ、今年いよいよ自身でもラリーレイドに参戦する。

Rally Mongolia 2009
8月2日(日)~11日(火)
─8etaps(ルートは未発表)

Recent Posts

利用規約 | お問い合わせ | プライバシーポリシー

page top

carsensor EDGE.net

輸入車・新車・中古車・ディーラー・販売店の情報満載。大人のためのプレミアカーライフ実現サイト カーセンサーエッジ

リクルート