熟成を重ね精度と性能を上げる
スズキの姿勢はポルシェと似ている
ロマンあふれる「世界最速」の響き。バイクにおいても、その称号を巡り各メーカーがしのぎを削ってきた。90年登場のカワサキZZR1100が市販車として初めて290km/hを突破。その6年後、ホンダCBR1100XXスーパーブラックバードがバイク専門誌の実測テストで303km/hを達成した。
その記録に呼応するかのように出現したのが、99年に登場したスズキGSX1300Rハヤブサである。私は海外のサーキットでテストし、メーター読み325km/hをマークしながら写真を撮ったのだが、あの時の興奮は今も忘れられない。その後、ハヤブサは世界最速の座を守り続けている。01年、ヨーロッパで300km/hの自主規制が始まり、事実上の記録打破ができなくなったという背景を配慮しても、ハヤブサはやはり世界最速の称号にふさわしい。
なぜハヤブサが最速なのか? 面白いことに、スズキのエンジン開発は、伝統的に特殊なフィーチャーを織り込んだりしない。フリクションロスの低減や可動パーツの軽量化などといった細かい煮詰めを、地道に推し進めるのが「スズキ流」なのだ。
クルマでたとえるなら、熟成を重ねた結果として最高速310km/hを実現したポルシェ911ターボか。ハヤブサはメガツアラーとして十分に実用的なパフォーマンスを兼ね備える。このあたりも収納や快適性に配慮した911ターボに通じるものがある。しかし、圧倒的に違うのは価格だ。911ターボは6MTで1858万円。一方のハヤブサは最新モデルでも156万円。10分の1にも満たない価格で、同等の最高速が手に入ってしまうのだから、バイクのコストパフォーマンスの高さには改めて恐れ入る。
ハヤブサのエンジンをベースとするネイキッドバイクがB-KINGだ。アップライトなポジションでハンドルの押さえが利かないネイキッドにスポーツモデルのエンジンを搭載する場合、大抵デチューンを施す。しかしB-KINGは強大なトルクを発揮するとんでもない怪物だ。メーカーもそのヤバさを認識しているのか、250km/hでリミッターが作動する。コイツは911カレラカブリオレにターボのエンジンをそのまま搭載し、幌を開けたどころかフロントウィンドウすら取り去ってしまったようなもの。誰にでも勧められるシロモノではないが、個人的には突き抜けた感じがあり、非常に好きなバイクだ。B-KINGを見ているだけで、何かやらかしたくなってワクワクする。最高速とは違った方向で、ロマンが刺激されるのだ。
HAYABUSA 1300
98年、ドイツの国際オートバイ見本市で初登場し翌年市販化されたハヤブサは、08年モデルで初めてモデルチェンジを受けた。エンジンは初代の1299ccから1340ccにスープアップ。エンジンの出力特性を3段階から選べるスズキ・ドライブ・モードセレクター(S-DMS)を導入。最高出力は遂に197psを達成
B-KING
01年の東京モーターショーに出品されたコンセプトモデルが、7年の歳月を経て、スズキの最強ネイキッドB-KINGとして再び現れた。ハヤブサ譲りの1340ccエンジンは、ライダーの好みに応じて2つの走行モードを選べる。スペックだけではなく強烈な個性を発するマッシブなデザインも、このモデルの性格を物語っている