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DailyEDGE特別編 My EDGE Car

気になるあの人の“エッジ”な車拝見

マイエッジカー

林 望 作家

イギリスに関する著書を数多く発表している林望先生。
愛車もイギリス車かと思いきや、ドイツのコンパクトセダンでした

HAYASHI Nozomu × MERCEDES-BENZ C-Class

林 望 作家

M・ベンツのシートは世界一である

正直に告白すると、林さん(以下リンボウ先生)が「M・ベンツは嫌いだ」なんて書いているなんて、インタビュー後に知った話だ。取材担当者としては恥ずかしい限りだが、先生の著書『リンボウ先生の役立たず試乗記』(徳間書店)にちゃんと書いてあった。しかも、よりによって先生が日本で初めて所有することになる“外車”、M・ベンツCクラス(旧々型)の項の、いきなりの書き出し1文目。インタビュー中は「M・ベンツのシートは世界一!」だなんて、上機嫌に話してくれたのに……と本を確かめると、発行日が1997年5月とある。ハハァと、それで少し納得した。1997年。実はこれがリンボウ先生の転換期なのである。
「(1997年に)交差点で止まっていたら、居眠りの4tトラックに追突されましてね。幸いむち打ち程度で済んだからよかったけど」

それでも、乗っていたスバルインプレッサスポーツワゴンの後部をぐしゃぐしゃにした4tの衝撃は、先生のクルマに対する考え方を大きく変えることに。それまでは、国産車一辺倒だった。
「左側通行で右ハンドルというのは、右左折が自然だし、道端に停めても乗り降りしやすくと、すべて理に適っていますから。昔は輸入車って左ハンドルばかりでしたからね」

インプレッサと同時にユーノスロードスターも所有していたし、その前にもやはりユーノスロードスター、さらに前は「スバルを3台乗ったかなぁ。その前はスカイラインにファミリアに……いろんなのに乗りました」

いろんなのに、をさらに紐解くと、19歳で免許を取って以来、件のインプレッサまではずっと日本では国産車。イギリスに短期間だが住んでいた頃は、イギリス車かと思えば「イギリスの中古車は高いんだよね。だから最初はトヨタのカリーナ。2回目の時はシトロエンのGSでした」。また短期間のイギリス滞在時にはレンタカーでジャガーやイギリスフォードを何台か乗ったこともあり、さらには冒頭の先生の著書でいすゞフローリアンやホンダS800、ミツオカゼロ1、ローバーMG F、日野コンテッサ……と「乗りたいと思ったクルマ」の運転席に座って、走らせている。

それだけのクルマを体験してきた中で、安全性を考えて選択したのがCクラス。もちろんそれだけではない。昔から腰が悪いという先生のお眼鏡に適ったのがM・ベンツなのだ。偶然にもルノーを愛車とする私とカメラマンを前に「ルノーはシートがいいと言われるけど、ウソをつけと思うよ」と豪快に笑っていらっしゃる。ハハハ……。 「クルマに乗ることが好きなんですよ。別にレースに出るとかスピードを出すことには興味がない。クルマをイジることもしない」

「私は何しろケチですからね」なんて言う先生は「クルマに上限300万円しか使わない」主義でもある。また走行は1万km以下、できれば1年以内の中古車であること。このC240はギリギリ1年未満ではなかったが、それでも2005年式を昨年購入。距離は7000kmだった。「この2600ccエンジンはCのボディに対してバランスがいい。穏健で扱いやすい」と

高速道路よりは田舎道が好きだという。先細りしそうな道でもどんどん進んでみる。「いざとなればナビの“自宅”を押せばいい」。一番遠くまで行ったのは青森。それを「800km足らずですから」と事もなげに言う。しかも自宅の車庫に入れたら「あーとうとう着いちゃった」。で、「もう一度出かけようかと思った」そうだ。特にM・ベンツは長距離が楽しいそうで、実際、最初の旧々型C200では10万km、2台目の旧々型C200は15万kmで、昨年4月に購入した今の愛車・旧型C240はすでに3万5000kmを走破。「不景気なタクシーより走っているかもね」

インタビュー最後のほうでは「名古屋でぎっくり腰になったけど(愛車に乗って)東京へ帰ってきたら治ったことがある」とM・ベンツベタ褒め状態。そうそう、冒頭の「M・ベンツなんて嫌いだ」と書いてある試乗記は、「欠点のなさすぎるクルマ」だから嫌いだと後半のほうで告白しつつ、最後はこう締めている。「正直に言うと、このクルマ、ぜひ欲しいな。へへへ」

PROFILE
はやし・のぞむ/1949年2月20日生まれ。慶応義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授。東京芸術大学助教授を経て、作家活動に専念。『イギリスはおいしい』(平凡社/文春文庫)、『「どこへも行かない」旅』(光文社)、『リンボウ先生の大人の知的旅行術』(オータパブリケイションズ)ほか多数の著作を出版。近著は8人の作家がドライブシーンをモチーフに愛の情景を描いた『あなたと、どこかへ』(文春文庫)や『新個人主義のすすめ』(集英社新書)など。
【Official HP】http://rymbow.hp.infoseek.co.jp/
文・ぴえいる工場 写真・阿部昌也
text / PIERRE Kojo photos / ABE Masaya