男ならだれもが一度は「加藤鷹のようになりたい」と憧れたことがあるはず
僕らが鷹さんの“ゴールドフィンガー”を見られるのはクルマのおかげだった!
「見た目が派手だったり、こういう仕事をしていたりするからかな。プライベートでも遊んでいるイメージがつきまとうけれど、硬派な生活をしているんですよ。クルマに女を乗せるのは大嫌い。僕は飛ばし屋だから横でギャーギャー言われるのは気に障るし、クルマは一人になれる数少ない空間だから……」
このド派手なLSを前に笑顔で言われてもいまいち信じられなかったが、鷹さんの車歴を聞くうちに本当だということがわかった。
鷹さんが初めて手に入れたクルマは「胃が悪くなるくらい」のシャコタンにした“暴走族仕様”のハコスカ。これで卒業式に出て、卒業旅行代わりに当時開通したばかりの東北道を盛岡から仙台までぶっ飛ばした。
「調子に乗って走っていたら911がビューンと抜いていってね。ツッパリながらこんなクルマで喜んでいる自分はなんてショボイ男なんだって思いましたよ。そしていつか絶対にポルシェに乗ってやろうと誓いました」
その後タウンエースワゴンを経てソアラを手に入れる。2リットルクラスのクルマが200万円以内で買えた時代に400万円近くしたため、仕事が終わった後もアルバイトをしてローンを返済したという。ソアラに2年乗った後、いよいよ念願のポルシェを買うことに。しかしさすがに911には手が届かなかったので914ー6をチョイスした。
「東京まで買いに行ったけれど、その帰りにいきなり壊れてしまったんですよ。秋田にはポルシェを直せる人が一人しかいなかったので、入庫してもなかなか戻ってこない。しかも冬は雪に埋もれてしまう。結局1シーズンで手放し借金だけが残ってしまった」
上京してからも鷹さんのクルマに対する情熱は冷めることがなかった。酒も飲まず、食事は現場の弁当で済ませる。男優としてデビュー後わずか1年で500万円貯め、念願のポルシェ911を手に入れた。
「最初は930のカレラだったのですが、これがハズレでね。すぐにオイルが漏れてしまう。そこでSCカブリオレに乗り替えました。次に乗ったのがターボカブリオレ。これでようやく憧れを手に入れたと実感しましたね」
この頃はよく仲間とツーリングに出かけていたそう。参加しているのはフェラーリやランボルギーニ。アクセルを踏み込んだポルシェを軽々と抜いていく12気筒モデルたちを見てすぐにポルシェからフェラーリへの乗り替えを考えた。決めたからには即実行。わずか数年の間に348tbとテスタロッサを2台、計3台のフェラーリを乗り継いでいる。


人と同じクルマには興味がない。車高を落とし20インチホイールを履いたLSにはノーマルとは違う風格がある。「オシリの厚みがちょっと気になるので、次はここにキャラクターラインを入れたいんですよね」。インテリアの小物はスワロフスキーで統一、エンブレム類はすべて自分で加工した。今頃はBRANEW製のフルエアロをまとっているはずだ
「ポルシェに憧れたのもそうだったけれど、僕には抜かれるとそのクルマが欲しくなる癖がある。2台目のテスタロッサはサーキット仕様にしました。5点式シートベルトにしてブレーキはブレンボの8ポットに替えて、天皇賞で獲った100万円を握りしめて買いに行ったケーニッヒのマフラーを付けてね。これで富士の走行会に通いましたよ。どんなクルマにも負けなくて最高に気持ちよかった」
このような話を聞くと、現在のLSはずいぶんおとなしい。理由を尋ねたら「年齢と安全性を考えて選んだ」ということだった。実は一昨年の末、マシントラブルが原因で愛車が炎上するという事故に遭った。目の前で上がった数メートルの火柱を見て、次は壊れないクルマに乗ろうと考えたそうだ。
「でもスポーツカーへの憧れは今でもありますよ。乗りたいのはフェラーリF430。あとはディーノやデイトナ、スカイライン54Bなど子供の頃に憧れたクルマたちかな。もしクルマという趣味がなかったら男優にはなっていなかったでしょうね。文字どおり身を削って何十年も業界にいなくても、普通にサラリーマンをしながら十分に楽しい生活を送れているはずだから。そう考えるとクルマが加藤鷹を支えているのだと思います」
text / TAKAHASHI Mitsuru photos / HAGA Gensho

